あるようでない、でもそこにある「不妊」という病
なんか昨今世間的に不妊治療が話題になっていたので、なんとなく急遽、コラム的な戯言を垂れ流したくなったので書いてみる。
なお、自分は7~8年くらい前に精索静脈瘤による男性不妊であることがわかった立場である。
なんとなく「ですます調」は違うなと思ったので「だである調」のため、なんとなく不遜な文調で申し訳ない。
そもそも不妊とは?不妊症とは?
一般的に、「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交をしているが、1年間妊娠しないことをいう、と日本産科婦人科学会では定義されている。
ざっくばらんに言えば、夫婦ないしはカップルが1年間避妊をしないでSEXし続けて妊娠しなければ、その二人は「不妊状態」ですよ、とも理解できる。
じゃあ「不妊病」とはなにか?
語弊を恐れず言えば、「不妊状態」=「不妊症」と思うほうが何となくしっくり来る。
「不妊病」とは言い換えれば「不妊状態を引き起こしている病」を指すはずだが、正式な医学上の病名で「不妊病」とはいうものは存在しない。
様々な因子が男女双方の要因によって複雑に絡み合い織り成す症状であり、2人の人間が1つになって初めて発症する病だと思いたい。
いや、例えば、無精子症や卵管閉塞といった明らかに1つの病で「不妊症」を満たすことがあるのかも知れない。
しかしながら、2人の人間が1つになって初めて発症すると言ったのは、無精子症の人が独身を貫くまたは子供を欲さないとき、この無精子症や卵管閉塞といった病は「不妊症」にはならない。
まぁ当たり前だろう。
ただ、これが「不妊症」というものなんだ、と知るべき大前提なんだと自分は思う。
「知る機会」の少なさ
世間一般で言う、不妊症への問題意識として「不妊症は女性の問題だ」や「不妊症は女性だけの問題ではなく男性も合わせた問題だ」というものがある。
WHOが公表した不妊症の性別要因割合は、女性要因に起するもの41%、男性要因に起するもの24%、男女双方の要因に起するもの24%、原因不明なもの11%とのことらしい。
ここから言うのであれば、「不妊症は女性だけの問題ではなく男性も合わせた問題だ」という見識に間違いはなく、全くもって同意見だ。
ただ、個人的にはこれを標語にすることには少し違和感を覚える。
少し話が逸れるけど、まず「不妊症は女性の問題だ」という意見を持っている方にはこう告げたい、「それは前時代的な考えで医学的に誤っている。知識をバージョンアップしたほうが良い。」と。
なぜこういった意見が未だ出るのか?
誰がこんなことを言っているのか?
完全なステレオタイプだし、語弊があっても仕方ないと思いながら書くけど、男性の多くはこの意見側に少なからず偏っていると思う。
知識としての「不妊症は女性だけの問題ではなく男性も合わせた問題だ」と考える人は男性にも多からずともいると思う。
でも次のことを気にして生きている人はものすごい少数派なんじゃないかと思う。
「あなたの金玉(精子)って元気ですか?」
9割以上が「わからない」か「元気(根拠なし)」なんじゃないかな。
だってほとんどの人は「不妊症」にならないと調べないもの。
でも、そこが正直男女の齟齬の発生源になっているとなんとなしに思っている。
女性は生理があるじゃない?
だから子宮や卵巣について意識する機会が自然と与えられているじゃないだろうか?
なにか異変があるようであれば婦人科にかかる機会も多いのではないだろうか?
男性はどうだろうか?
オナニーして精子出て、「お、今日は量が多いな(少ないな)」ぐらいは思うかも知れない。
でも、「やべ、俺ちょっと男性不妊かもしれん。病院行って検査しよう」と思う人間が果たしてどれだけいるだろうか?
そんな知る機会の差が不妊症への意識の差につながっているんではないだろうかと思うし、「不妊症は女性だけの問題ではなく男性も合わせた問題だ」と考える男性は知識としてという所以だ。
子孫を残す能力がない=生物としての最欠陥
自分が精液検査を受けて、男性不妊がわかった後に、当時の妻に次の言葉を投げられた(現在は離婚して別の女性と再婚済み)。
「不良品」
なるほど、生物が生物として根源的な行動原理は自種族の繁栄だ。
その最も根源的な「子孫を残す」能力を持っていないことは、生物として欠陥品であり不良品である。
多くの反論があると思う。
いや、反論しかないだろう。
上辺の理屈はいくらでも付けられる。
「子供を生み育てるだけが人生じゃない」「愛する人と楽しい時間を過ごせばいい」「好きなことを極める時間を取ればいい」「夢を追いかけて…」云々カンヌン。
何十でも何百でも反論の余地はある。
でも正直自分は思う。正論だ。
だから言いたい。
不妊治療のための検査とは根源的な部分を揺さぶることが判明する検査なのだ、と。
治療の性バランス不和
不妊治療にあたっては原因となる症状によって大きな違いがあるが、圧倒的に女性側の負担が大きい。
前述の通り、自分は精索静脈瘤という病気だった。
一般男性の約15%ほどに見られる病気だという。
遺伝によるものが多いらしいが、精巣から腹部へ戻る主な静脈が血液が逆流することにより、精巣機能に障害が出るというものらしい。
自分の原因ははっきりした。
腹腔鏡手術で主な静脈を結索し別のルートを使用させる。
このように男性不妊の場合、原因さえわかれば治療の殆どは単発で終わる。
ただし、原因のわからないことも多いらしいし、そうなると治療の殆どはサプリや漢方を飲んだりという形になるようだ。
そして、早い妊娠を望めば、人工授精や体外受精、顕微授精といった選択肢が出てくる。
世間一般で言われる不妊治療の殆どがこれらを指すように思えるが、それが問題だ。
これらの治療の殆どは、女性に対して負担が強いられるものだ。
排卵前検査やホルモン剤の注射、施術後検査など、時間的な精神的な身体的な負担は男性の比じゃない。
それぐらい男女で治療にあたっての負担バランスが悪いのだ。
正しいことを正しく知って正しく感じる
ここまで読んでくださった方は誠にありがとうございます。
ただ詫びなければならないのは、あくまで前述の内容は主観的な事柄が多く含まれる。
ただ、どうしても伝えたかったことは、性差による認識の違いや、感じ方の違い、負担の違いが事実として存在するんだ、ということである。
そしてそれは、個々に違うし、状況も違うことだろう。
何が正しくて何が間違っているのかは当事者である2人にしかわからないだろう。
でも、自分が歩んできた道から何かを汲んであなたのこれからに生かしてほしいと思ったからこうして駄文をない頭捻ってひねり出した。
これから不妊治療にあたる(あたろうとしている)男性へ
前述の通り、不妊検査ってめちゃくちゃ怖いものだと思います。
でも怖くていいんだと思います。というか、それが当然です。
何が怖くて、どう怖いのか、奥さんに伝えてあげればいいと思います。
なさけなくていいんです、男なんてだいたいがかっこ悪いものです。笑
でも、早く検査受けたほうがいいですよ。
早ければ早いほど選択肢が多いです。
それと検査結果が良くても悪くても、奥さんの支えにならないといけません。
逆に自分のことは誰も支えてくれません。
愚痴りたいのにそういったコミュニティもなかなか存在しません。
そんなとき、縁があったらコメントください。
聞くぐらいしかできませんけど。笑
これから不妊治療にあたる(あたろうとしている)女性へ
男性目線のグダグダした物言いですみません。
旦那さんは検査に協力的ですか?
それなら非常にいい旦那さんだと思います。二人で二人三脚、頑張って下さい。
でも辛いこともじつはたくさんあって、お互い押し殺したりしていませんか?
たまには本音を言ってみたり聞いてみたりして見てください。
旦那さんは検査に非協力的ですか?
自分もその立場だったので、あまりいいこと言えませんが、あまり責めないでください。
前述の通り、不妊検査ってめちゃくちゃ怖いんです。
上からガーガー言われても殻に閉じこもっちゃいます。
何が嫌で何が壁になっているのか、聞いて理解してあげてください。
男は子供なんです。自分の体のこともわからないのに意固地になるのです。
なぜ、検査が必要なのかが理解できればきっと協力してくれるはずです。
結局は夫婦の問題
最初に戻るけど、結局「不妊症」というのは夫婦間でしか存在しない病です。
お金の問題、意識の問題、時間の問題、精神的な問題、医学的な問題、様々な問題が千差万別あるものです。
ついつい、「誰に原因があるから…」とかなりがちだけれど本当に意味ないなと思います。
夫婦でしっかり話し合って、どうしたいか、どうすべきか、お互いがお互いを理解してその時々の選択をお互いにしていく他ないと思います。
片方が突っ走ったりしても、付け焼刃的になって結局はうまくいかないんじゃないでしょうか。
自分は不妊が原因で離婚しました。
そして現在再婚していますが、再婚の直接の理由は妊娠でした。
ただし、残念なことにその子は流れてしまいました。
もともと、嫁さんには娘が居て、自分も今更子供がほしいわけではなかったのですが、妊娠がわかったときは嬉しくて泣いた(嫁談)し、流れてしまったときも泣いたし、すごいほしいかというと、どちらかといえばできたらいいなぁという思いです。
でもまぁ、ほしいならほしいなりに動くのは時間制限があるので、12月から改めて不妊治療を行おうとしています。
世の中には色々な考えがあるとは思いますが、「不妊症」という病に対して自分たちなりに対峙していきましょう。